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  • 執筆者の写真株式会社DIVERT NEWS

製造業におけるAIを活用した外観検査を導入検討する時に最初にすべきこと


 製造業におけるAIを活用した外観検査システムの新規構築に際しては、目的と目標の明確化および既存プロセスの理解が最も重要です。本記事では、この導入時におけるプロセスを、具体例を用いて説明したいと思います。


目的と目標の明確化


 外観検査システムの目的をもう一度考えてみることが重要です。主に欠陥検出の自動化と検査精度の向上であると想像が出来ます。現在、人間の検査員によって行われている製品の外観検査をAIによって自動化することで、効率的な検査を実現することが目的の一つであるのではないでしょうか。また、AIシステムを導入することで人間の検査員による見逃しを減らし、検査精度を向上させることも重要な目標であると思います。改めて整理してみましょう。


 具体的には、検出すべき欠陥の種類とその基準を明確に定義することが求められます。例えば、金属板製品の外観検査では、表面の傷、変色、凹み、異物の付着などが対象となるでしょう。さらに、検査の精度要件としては、例えば検出精度90%以上、誤検出率5%以下、未検出率2%以下といった具体的な数値目標を設定する必要があります。


 これにより、1000枚の製品中、900枚以上の欠陥を正しく検出し、誤って良品を欠陥品と判断するのは50枚以下、欠陥を見逃すのは20枚以下とする具体的な基準が明確になります。


 AIを用いた外観検査で100%の精度を達成することは、多くの現実的な課題が存在するため非常に困難です。まずは、100%の精度を目指すのではなく、実用的かつ許容範囲内の精度を達成することを目標とする現実的なアプローチが求められます。



既存プロセスの理解


 次に、現在の検査プロセスを詳細に理解することが不可欠です。現行の検査フローをステップごとに確認し、どの部分にAIを導入するかを決定します。例えば、金属板の製造ラインにおいて、製品が生産された後、人間の検査員が目視で検査し、欠陥があれば取り除くという流れを、実際に理解することが重要です。また、検査基準として、傷の深さや幅、変色の範囲、凹みの程度などを詳細に把握することが求められます。


 さらに、現在の検査員のスキルや経験を考慮し、AIシステムがそれに代わりうるかを評価する必要もあります。熟練検査員が経験に基づいて判断している微細な欠陥をAIが同等に検出できるかどうかを検討することが重要です。




AI導入部分の決定

 既存プロセスを理解したあとは、AIを導入する部分を特定する必要があります。手動検査のどの部分をAIに置き換えるかを決定し、高解像度カメラとAIによる画像解析システムで目視検査の部分を代替することが考えられるでしょう。具体的には、製造ライン上に高解像度カメラを設置し、リアルタイムで製品を検査するシステムを構築することの検討です。


データ収集と機器の選定


 最後に、AIシステムのために必要なデータと機器を確認する。高解像度カメラを使用して検査する製品のデータを収集し、照明設備を整えて製品表面の詳細が明確に映るようにします。このように、データの質と量を確保し、AIモデルを効果的にトレーニングすることが必要です。

以上のように、AIを活用した外観検査システムの構築には、目的と目標の明確化、既存プロセスの理解、AI導入部分の決定、データ収集と機器の選定という一連のプロセスが重要であり、これらを適切に行うことで高精度かつ効率的な検査システムを実現することが可能となります。


 ここまでの内容を要件定義としてどこまで詳細にイメージが出来るか、が外観検査システムの導入の結果を左右します。

続いてデータ収集の重要性

 要件定義とともにデータの収集も非常に重要です。外観検査システムの構築において、データ収集は非常に重要なステップです。高精度なAIモデルをトレーニングするためには、質の高いデータとその多様性が不可欠でもあります。

 ここでは、サンプル収集とデータの多様性についてまとめてました。莫大なデータが必要となりますので、データ収集は早め早めに動くこともお勧めします。構築するAIモデルの性能にも大きく影響されますので。


サンプル収集

 データ収集の第一段階として、欠陥がある製品と正常な製品のサンプルを収集する必要があります。これは、AIモデルが正常と異常のパターンを学習するために不可欠なステップです。


 では実際に具体例を交えて説明します。


  1. 欠陥の種類と範囲を集めます

  • 事例:金属板製品の外観検査の場合

  • 手順

  1. 傷:金属板の表面にできる微細な引っかき傷から深い切り傷まで、様々な傷のサンプルを収集します。

  2. 変色:酸化や加工不良による色の変化、染みなどのサンプルを集めます。

  3. 凹み:圧力や衝撃によって生じた凹みのサンプルを収集します。深さや大きさが異なるものを含めます。

  4. 異物の付着:塵や異物が付着したサンプルを収集します。

  5. 欠陥のバリエーションも集めます

  • 事例:電子部品の外観検査の場合

  • 手順

  1. はんだ不良:はんだの盛り上がりや不足、接触不良など、異なる種類のはんだ不良のサンプルを収集します。

  2. 表面クラック:細かいクラックから大きな割れまで、様々な大きさと形状のクラックのサンプルを集めます。

  3. 正常品の収集も集めます

  • 事例:プラスチック成形品の外観検査

  • 手順

  1. 完全に正常な成形品のサンプルを収集し、表面に傷や変色、凹みがないことを確認します。

  2. 正常品のデータを大量に集めることで、モデルが正常な状態を正確に認識できるようにします。


データの多様性

 AIモデルが実運用環境で高い性能を発揮するためには、トレーニングデータの多様性が重要です。様々な環境や条件下で収集されたデータを用いることで、モデルの一般化能力を向上させることができます。具体的な手法を以下に示します。


  1. 環境の多様性を意識してデータを収集します

  • 事例:自動車部品の外観検査の場合

  • 手順

  1. 照明条件の変動:昼間の自然光下、工場内の人工照明下、夜間の低照度環境など、異なる照明条件でサンプルを撮影します。

  2. 背景の変動:製品が置かれる背景を変えて撮影し、異なる背景条件でも正確に検出できるようにします。

  3. 温度変化:異なる温度条件下でのサンプルを収集し、温度による影響をモデルに学習させます。

  4. 製造条件の変動を意識してデータを集めます

  • 事例:食品パッケージの外観検査の場合

  • 手順

  1. 異なる製造バッチ:異なる日に製造されたバッチからサンプルを収集します。

  2. 異なる製造ライン:異なる製造ラインで作られた製品からサンプルを集め、ラインごとのばらつきを学習させます。

  3. 製品の多様性を意識してデータを集めます

  • 事例:スマートフォンの外観検査

  • 手順

  1. 異なるモデル:同じシリーズの異なるモデルやバージョンの製品を収集します。

  2. 異なるカラー:異なる色や仕上げのスマートフォンを収集し、表面処理の違いによる影響を学習させます。



データ収集を整理すると


 データの質と多様性を確保することは、AIモデルの性能に直結するため、データ収集段階でのアノテーション(※1)の取り組みは非常に重要です。多様な条件下で収集されたデータを正確にアノテーションすることで、実運用環境においても高い精度と信頼性を持つ外観検査システムを構築することが可能となります。具体的な事例をもとに詳細なアノテーションを行うことで、より精度の高いAIモデルを構築し、製造プロセスの効率化と品質向上を実現することができます。


※1アノテーションとは

 アノテーションとは、データに対してラベルやタグを付ける作業のことです。例えば、画像データの場合、欠陥部分に「傷」や「変色」といったラベルを付けたりすることです。最も簡単な例で言い換えますと、画像中の特定のオブジェクト(例えば、猫や犬)に(猫や犬という)ラベルを付けることです。

 製造業の場合は欠陥検出のために、製品画像の傷や変色部分にラベルを付けることなどが想定されます。アノテーションが正確で詳細であるほど、AIモデルはより高い精度で学習・予測を行うことができます。不正確なアノテーションは、モデルの性能を著しく低下させる可能性があるため、アノテーション作業は非常に重要です。AIモデルを効果的に構築するためには、正確かつ詳細なアノテーションが不可欠です。





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